放射線は安全という授業 [原発事故]

横浜市で放射線授業始まる 親ら不安の声、教員にも戸惑い(朝日新聞 2012年2月10日14時35分)

こういう「放射能はこわくない」という話は新しいものではない。

書いてあることは、いつもと同じ、

「100ミリシーベルト以下ではそのガンの原因は放射能かどうか分からない」「ガン以外は病気じゃない」「どうせ自然から被ばくしてる」

みたいな、原発事故後耳にタコができるくらい聞かされ続けて来た文言だ。

これに対して「何言ってるんだ!放射性物質は危ないに決まってるだろう!」と皆が言う。

だけど、おそらくこの本を書いてる人間だってそれは分かっている。

「危険」なのは承知なのだ。

当たり前だ。原発事故が起きなければ、空間線量が5倍になったり、給食で399ベクレルのセシウムを食べる可能性などなかったのだから。

そうならないために、5重の壁だ、格納容器だ、ベントだってやったわけだ。

それが全て失敗した。

失敗したから、「絶対に漏れてはいけないもの」が日本中にバラまかれた。

じゃあ、回収すればいい。除染すればいい。

ところができない。できるはずがないし、できないことは最初から分かっていた。

だから、漏らさないようにしてきたし、漏らさない以外に、放射性物質に対処する手だてはないのだ。

まったく、当たり前の話だ。

オムツからウンコ漏れて絨毯に「染み」できたら、落とすの大変だろうが。

だから漏れないようにする。隙間から落ちそうになったらとりあえずフローリングの上に移動させるとか、手で押さえるとか、もう「絶対に」絨毯の上には落ちないようにするだろう。

間一髪でも何でも、1ミリでも1グラムでも、とにかくギリギリのところで、それを防げば、汚れは「0」なのだ。

しかし、それが「突破されたら」どうなるか?

一気に全てが落ちれば、もうどうすることもできないだろう。そうなったら「終わり」なのだ。

もう「染み」ができちゃった。どうしようもない。洗剤で洗ってもこすってもどうすることもできない。匂いも取れない。

そうなったらもう諦めるしかないだろう。

だから言うのだ。「こんな汚れたいしたことない」と。

「もっと汚れてるところはいっぱいある」とか「人間は汚れと共存してきた」とか「潔癖性はよくない」とか。

本当バカじゃないかと思う。

だから、こういう「言い訳」が通用すると思ってるいるのだ。

もし、この放射能漏れが原因で「全員死ぬ」可能性があれば、こんな言い訳しないだろう。

「全員死ぬ」あるいは「半分以上が放射線障害になる」なんてことになったら、さすがに強制退避させるだろう。

だから、事実20km圏内強制移住になってるじゃないか。

ところが、関東に来ると、その「言い訳」が通用すると「見積もっている」。

強烈な匂いでほとんどの人がぶっ倒れるような場所からはさすがに避難させるが、何となく「ほのかに」香る程度だったら、まあごまかせんだろう、みたいな話だ。

「半分以上放射線障害になる」場所から徐々に徐々に、その犠牲が減少してきて、250kmぐらい離れると、だんだん、1人2人ぐらいの犠牲になって、そうするともう他の発病原因と区別がつかなくなるから、胸を張って、

「犠牲はしょうがない、我慢して下さい、そのためには『安全と思い込むしかない』んです」

と言える。

だけど、まさか「ちょっとぐらいの犠牲我慢してくれ」なんて言えないから、

「安全です」

と言っている。それで「ごまかせる」という話だろう。

本当のこと言えばいいのに。何で言わないんだ? みんな分かってくれるよ、きっと。

「ごめんなさい。もうどうすることもできないんです。給食でも内部被ばくします。でも、『全員が死ぬ訳じゃない』んです。そのうちの何人かだし、それが放射能が原因かどうかなんて分からないんです。だから、気にしても、気にしなくても何も変わらないから、気にしないようにみんなで協力して、『我慢』しましょう」

そう言えばいい。

そうしたら、「ああそうか、じゃあ我慢しよう」と言う人と、「じゃあ避難しよう」と言う人に分かれるだろう。

我慢すれば、ロシアンルーレットに参加することを条件に、今までと同じ楽しい豊かな都会生活を送れる

まあ大人はいいけど、子どもは心配だ。

もっとも細胞分裂がさかんな時から、まずは空間線量が今後2年間平常値の2-5倍、それからセシウム134が半減して1.5倍ぐらいになって30年ぐらい外部被ばくして、給食食べて内部被ばくし続けて、体内に数ベクレルか数十ベクレルか分からないが、セシウム溜め込んで、ガンに限らず何らかの健康障害を引き起こす可能性を倍増させるだけだ。

でも大丈夫。全員じゃない。10万人に1人のガンが、1.5人になる程度だ。クリス・バズビーがトンデルのリスク係数(10万ベクレル/平方メートルの汚染でガン発症率1.1倍)を使って試算して、福島原発事故由来で「ガン死100万人」と言っていた。

100万人とか言うと「嘘付け!煽るな!」とか言うけど、これがもし本当に起きたとしても、今のガン患者数が仮に150万人として、もっとも厳しい評価でそれが1.66倍になると言うことだ。

つまり、相変わらず1億2000万人は「ガンじゃない」のだ。

どうですか? うれしいでしょう。日本全体でたったの1.66倍。

前スウェーデンとと東京の比較したけど、関東だったら最悪でも1.05倍ぐらいではないでしょうか。

余裕でしょう。「たいしたことない」でしょう。どうせ今までだってガン増え続けてるんだ。分かりゃしない。そう言いたいんですよ、国は。

ところが、それと比例して増える「ガン以外の」病気については、一切触れない。

チェルノブイリでも「関係ない」で終わり。

だから、避難する人はそこをもっとも気にしてる。

1.05倍とか1.3倍とか分からないが、こちらもまた「多少」増えるだろう。そして、放射線障害というのは、一度発症すると一生治癒しないから、病気の人間はこれから数十年増え続けるだろう。

しかし、元々あらゆる病気は増加傾向にあるから、それが放射能由来なのかどうかなのかは区別ができない。ただ、病気が「減少する」ということはないだろう。

免疫力低下、アトピー、慢性疲労など、全て含めれば、ロシアンルーレットの弾が当たる確率は、思った以上に高いと考えた方がいい。

でも大丈夫。100人のうち60人とか70人とかは健康でいられるから。

今までだって10人ぐらいいた「具合の悪い人」が、20人か30人に増える程度だ。

それを「たいしたことない」と思えれば、別に関東なんて「安全」だろう。

そして、避難すれば、そのロシアンルーレットよりは放射能健康被害に合う確率の低い場所に移動して、お金には苦労するかもしれないけど、子どもには多少なりとも安全・安心な環境を与えることができる。

この「多少」というのは、これから増えるであろう100人中10人か20人の「不健康な子ども」に自分の子どもがならない可能性、ということだ。

心配しなくてもいい。

放っておいたって、しばらくは「健康である」可能性の方が高いのだ。

ただし問題は、今0歳とか10歳とかの子どもが30歳40歳になるにつれ、「不健康になる」可能性は逆に高くなっていく、ということだ。

だから、避難する理由は、少しずつ増大していく「不健康になるかもしれない」可能性を、もっとも放射能感受性が高い子ども段階で取り除くということでしかない。

たったそれだけだし、それが全てなのだ。

だからやるなら「今」しかない。

それに命をかけるお母さんがいる。

「例え100人に1人でも不治の病いになる確率は取り除きたい」

ところが人によっては、「え、その程度?」と鼻で笑うのだ。

「1%とか10%とかたいしたことない。私の子どもはならない」

その認識をはっきりさせようよ。

それを「全員死ぬ。逃げろ」「いや死なない。煽るな」なんてやり合ってるから話がややこしくなる。

「1%か10%か分からないが、そういう健康被害が出るリスク」として話し合えばいいじゃないか。

そしてみんなで「それもこれも、まったく東電の原発事故のせいだ。あいつら絶対許さない」と言えば、それで良いじゃないか。

漏らしちゃいけないものを漏らした犯罪行為を、きっちり認識して、責任追及すればいい。

それをごまかそうごまかそうとしてるから、みんなうやむやのまま、「安全だ」「安全じゃない」なんて本質的じゃない議論で仲間割れしてるのだ。

「安全じゃない」んですよ。もうこれは結論。

「安全じゃない」

だって漏れちゃったんだもの。漏れて「強制避難区域」できたんだから。そこ見れば分かる。安全ならあんなもの作る必要ないんだから。その「危険」がずーっと東日本全体に広く薄く広がっているということだ。

そして、

「安全じゃないけど、もうどうすることもできないから、我慢するために、『安全と思い込む』ことにしよう」

それが「政治的判断」。

ICRP言うところの「最適化」。

何でみんなはっきり言わないかな?

「政治的にそう判断せざるを得ない」って。

「実は科学じゃないんです」って。

それ言ったら、東電・政府の責任が「くっきり」しちゃうから?

じゃあなおのこと言って欲しい。

「くっきり」させようよ。

「くっきり」させて、すっきりしようよ。


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