これから「大変なこと」は起きるのか? [原発事故]

放射能危険派の人は言う(まあ、妻も時々言うが)。

これから「大変なことが起きる」と。

では、何をもって「大変なこと」とするのか?

それは例えば「ガンや白血病患者が急増する」とか「人口が激減する」とかだろう。

実際そう断言している人もいる。

しかしながら僕は、このブログで何度も繰り返しているように、「福島はチェルノブイリ以上の被害は出ない」という立場を取っている。

では「大変なこと」など起きないと思っているのか?

いやまったく逆で、「大変なことが起きる」と思っているからこそ、関東から全てを投げ捨ててでも避難したわけだし、どう言い繕おうが、その避難という行為によって、「放射能は低線量でも危険だ」という自分の考えを十分すぎるほど表明してしまっている。

だから、そんな風に「避難した人」を見て、「避難しなかった人」はこう思うだろう。

「ははん、あいつ、口では『福島はチェルノブイリよりたいしたことない』とか言っているが、頭の中では『関東でも数年後に人がバタバタと倒れる』『子供が次々ガンになる』とでも思っているんだろう。大げさな。そんなことが起きるなら、今頃福島ですでに急性放射線障害がチェルノブイリ並みに何千人も出てるわ。それすらないのに、東京で健康被害が急増するなんてあるはずないだろう」

こう考える人たちは、「大変なこと」など絶対に起きないと思っている。

なぜなら、ある人にとっては(そして日本の大半の人々にとっては)、「大変なこと」はイコール「隣近所でバタバタ人が死ぬ」とか「子供が次から次へと甲状腺ガンを発症する」とか、「今、ここで、目の前で、大量に」何か起きることであり、そうでなければ、それ以外は全て「たいしたことない」思うのだ。

(そういう意味では、原発由来の放射能でDNAが破壊されるよりも、中国の大気汚染でゲホゲホと咳が出ることの方をずっと恐ろしいと感じている)

ところが、僕の考える「大変なこと」はそうじゃない。

もっとずっと静かに、長い時間をかけて、事態は進行して行くんだ。

人は徐々に、「健康を害して」行く

多くの子供が成長するにつれ、「不健康」になって行く。

多くの労働者が、「体調不良」に悩まされる。

しかも、それは明白なものではない。

何かがおかしい。どこかがおかしい。医者にも何だか分からない。

「気のせいだ」「ストレスだ」で片付けられる。

だから、無理してでも普通に生活する。しかし、一向に「具合は良くならない」。

周りを見ても、健康な人はピンピンして、相変わらずの生活を楽しんでいるし、テレビでは変わらぬ娯楽番組が流れ、街は買い物客で賑わっている。

誰にも言えない。何も原因は分からない。

そもそもある程度の年齢に達すれば、皆何らかの身体的な「不調」を抱えていて、「健康」を維持することがどれだけ難しいかということは分かっているはずだから、それが「どんどん悪化する」ことの恐ろしさなど、簡単に想像できるだろう。

(おそらく、僕が考える放射能由来の『健康被害』のもっとも恐ろしい部分は、どうがんばってみても『一旦生じた体調不良から抜け出せない』ということだと思う。ところが多くの人は、セシウムでちょっと具合が悪くなっても、医者にでも見てもらえばまるで風邪から回復するみたいにたちまち元通り健康になれると思っている)

しかしながら、そんな人が一人増え、二人増えして、やがて数十万人、数百万人、数千万人に膨れ上がったところで、何かが変わるだろうか?

変わるはずがない。

こと放射能に関して言えば、何が起きても「ガン以外は全て健康」と見なされるのだ。

その軽微な「体調不良」を「大変なことの兆候」として認識できるなら、「大変なこと」は「これから起きる」のではなく、今現在「すでに起きている」だろう。

それにだいたい、原発事故と関係なく、もともと日本中「具合の悪い人だらけ」だったのだ。

それは今後「確実に」増える。しかし原発事故以前から、ほとんど全ての疾病率は増加傾向にあるのだから、それが統計上2倍になろうが10倍になろうが、生活習慣のせいになるだろうし、「原因不明の不健康」など激増しても統計に出てくるはずもない。「ちょっとぐらい具合が悪くても」、明確な病気を発症するまで、多くの労働者は自分にむち打って黙々と働き続けてきたのだし、これからもそうなるだろう。

だから原発事故を起こした日本は、これから膨大な数になるであろうその「不健康な人間」を切り捨てて行くことに決めた。

放射能の影響によるそんな「確率論的に不幸な人間」が増えても、補償など必要はない。

それどころか全く逆で、ぶっ倒れるか鬱病になるかするまで働かせて税金を巻き上げ、病院に送り込まれたら医療費を搾り取り、ガンになったら外資系の製薬会社と組んで抗がん剤で一儲けし、それで早死にしてもらえれば年金も払わなくて済む、と考えている。

そして「全体として」健康な子供が何割か存在し、「全体として」ある程度の労働力が確保され、「全体として」日本の経済が回って、とにかく支配者層の利益がグローバル資本主義の中で優先的に確保されれば、それがすなわちこの原発事故の最善の解決策であると判断した。

そう「そろばん勘定」したのだ。

「大丈夫だ。たいしたことない。放射能など気にすることない」、今そう言っている人の半数が20年後に病気になったところで、残りの半数は相変わらず「何も起きなかった。放射能たいしたことない」と言い続けているだろう。

日本が世界の核廃棄物最終処分場になって田舎の半病人がみな原発労働者になろうが、幸いそうならずに済んだ「都会の健康な人」は、「明日は我が身」など露程も思わず、NHKのインタビューに答えてこう言うのだ。

「いや、放射能なんて全く気にしてなかったけど、子供含めて家族全員未だに健康そのものですよ」

そんな「ラッキーな人間」だけ掴まえて全国放送で流せば、「福島原発事故では何の健康被害も出なかった」と簡単に日本中、世界中を納得させることが出来るだろう。

つまり、「全体として」言えば、「大変なこと」など永遠に起きないのだ、、、。

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それでもやはり、今も心のどこかでは、考え難いが、僕の予想を裏切って、全てがひっくり返るような『とんでもないこと』が、この先起きる可能性は0ではないとも思っている。

だから、そのための備えは、あくまでも「個人的」なこととして、粛々と遂行していくつもりだ。



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